術前診断しえた後腹膜海綿状リンパ管腫の1例

森田　高行^1）3）, 藤田　美芳^1）3）, 池永　治親^1）3）, 宮坂　祐司^1）3）, 井上　善之^2）, 田辺　達雄^2）, 宮坂　史路^2）, 西沢　正明^2）, 堀田　彰一^2）, 下沢　英二^3）, 加藤　紘之^3）, 田辺　達三^3）

北海道消化器科病院外科^1）, 同　内科^2）, 北海道大学第2外科^3）

　後腹膜海綿状リンパ管腫の1例を経験した．症例は40歳男性で，腹部圧迫感を主訴として来院し，超音波検査にて蜂巣状構造を呈する巨大な腹部腫瘤を認めた．Computed tomographyでは左横隔膜下から膵後方を通り左腎下極に及ぶ内部構造均一な嚢胞状腫瘤としてとらえられ，血管造影では血管成分の乏しい腫瘤と考えられた．超音波ガイド下穿刺にて乳糜を吸引した．
　上記より後腹膜腫瘍（リンパ管腫を強く疑う）の診断にて摘出術を施行した．大動脈周囲にて強固に癒着し腫瘍の辺縁は不明瞭となっていた．切除された腫瘤はスポンジ様の構造・弾性を呈し，病理組織学的にリンパ管腫と診断された．
　後腹膜リンパ管腫の本邦報告例は約100例で，そのうち海綿状リンパ管腫は7例とまれな疾患であり，また浸潤性の発育・悪性化の問題点もあり文献的考察を加え報告した．

索引用語
retroperitoneal tumor cavernous lymphangioma, preoperative diagnosis

別刷請求先
森田　高行　〒065　札幌市東区本町1条1丁目　北海道消化器科病院外科

受理年月日
1992年5月13日

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