症例報告
空腸憩室内2次性胆汁酸腸石によるイレウスの1例
加藤 三博, 力山 敏樹, 高橋 良延, 木村 俊一
総合水沢病院外科
空腸憩室に生じた胆汁酸腸石によりイレウス症状を呈した1例を経験した.症例は88歳の男性で,嘔吐を主訴として救急外来を初診し,炎症性疾患を合併した,腫瘤による小腸イレウスとの診断で緊急手術のために外科入院となった.下腹部正中切開で開腹したところ腸石によるイレウスで,空腸憩室炎も認められた.腸石は摘出し,憩室炎はそのまま経過観察とした.術後経過は夜間せん妄を認めたものの順調であった.赤外線吸収クロマトグラフィー,高速液体クロマトグラフィーにより,腸石は2次性胆汁酸石と同定され,その形成機序や憩室の内腔と腸石の形態が一致することから考えて,この腸石は空腸憩室内で形成されたと判断した.空腸憩室内で形成された2次性胆汁酸石は本邦で2例目であり,きわめてまれな症例であったために若干の文献的考察を加えて報告した.
索引用語
enterolith, jejunal diverticulum, small bowel obstruction
日消外会誌 25: 2214-2218, 1992
別刷請求先
加藤 三博 〒023 岩手県水沢市大手町3-1 総合水沢病院外科
受理年月日
1992年5月13日
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