会長講演
膵炎の病態と治療
斎藤 洋一
神戸大学医学部第1外科
教室で経験した251例の急性膵炎例を通じて問題と思われた点を抽出し,それらを解決すべくこれまでに行ってきた基礎的検討を中心にその成績を述べた.まず,膵炎の初期病態を明らかにし,特に微小管の障害が関与している可能性を指摘した.胆石膵炎では,発症に胆汁酸の膵外分泌促進作用が関与する可能性と重症化における膵管内圧上昇の重要性を,他臓器障害に関しては,腹水中の肝細胞障害因子,肺障害でのマクロファージの関与,腎障害,膵循環障害におけるミトコンドリア障害とフルオロカーボンによる治療の可能性を見いだした.重症化機構に免疫能低下が関与すること,その予防に経腸栄養が有利であることも指摘した.重症度と予後判定にtrypsin protein esterase活性の測定が有用であることも判明した.治療に関しては,腹膜灌流と血漿交換の意義を明らかにし,外科治療と組み合わせた積極的な治療が本疾患の治療成績向上に結びつくものと考えられた.
索引用語
cell biology of cuute pancreatitis, organ failure in acute pancreatitis, peritoneal lavage, plasma exchange, surgical treatment of acute pancreatitis
日消外会誌 25: 2259-2268, 1992
別刷請求先
斎藤 洋一 〒650 神戸市中央区楠町7-5-1 神戸大学医学部第1外科
受理年月日
1992年5月13日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|