原著
漿膜下層浸潤胆嚢癌に関する臨床病理学的研究
吾妻 司
東京女子医科大学消化器外科(主任:羽生富士夫教授)
漿膜下組織(ss)まで浸潤した胆嚢癌(以下ss胆嚢癌)の予後規定因子を明らかにするため本研究を行った.対象はss胆嚢癌のうち,全割標本にて癌の浸潤範囲の検索が可能であった33例である.ssにおける癌の深達度,ssにおける癌の浸潤面積の胆嚢全体の面積に対する割合(ss%),ssにおける浸潤増殖様式(INF)の3点から浸潤様式を検討し病理学的因子および術後生存期間との関係をみた.1)ssにおける深達度は脈管侵襲やリンパ節転移,hinfと,ss%はリンパ節転移や肝転移と有意の相関を示した(p<0.01).2)INFはいずれの病理学的因子とも有意の相関はなかった.3)術後の生存率についてみると,ss1,2はss3と比較して有意(p<0.01)に良好であり,ss%20未満は20以上と比較して有意(p<0.05)に良好であったが,INFでは差はなかった.以上より,ssにおける深達度やss%は,INFよりも病理学的進行度や術後生存期間との相関が強く,ss胆嚢癌の重要な予後規定因子と考えられた.
索引用語
gallbladder cancer invaded to subserosal layer, mode of spread of gallbladder cancer, prognosis regulating factor
日消外会誌 25: 2321-2329, 1992
別刷請求先
吾妻 司 〒162 新宿区河田町8-1 東京女子医科大学消化器外科
受理年月日
1992年5月13日
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