直腸癌前方切除例における吻合部口側血流量に関する臨床的検討

山本　眞二, 望月　英隆, 長谷　和生, 横山　幸生, 牛谷　義秀, 山本　哲久, 八岡　利昌, 別宮　慎也, 玉熊　正悦

防衛医科大学校第1外科

　直腸癌38例を対象に，直腸前方切除術時の下腸間膜動脈（IMA）根部結紮切離の安全性を検討した．まず，開腹時のレーザードップラー血流計による吻合予定部口側結腸壁血流量の平均値は24.7 ml/min/100 g tissueであった．この血流量は，IMAと左結腸動脈（LCA）を同時にクランプした場合に16％減少し，上直腸動脈（SRA）のみのクランプ時の減少率9％に比し有意に大きかった（p＜0.05）．なお（IMA＋LCA）クランプをRiolan arcade（RA）（＋）群に行った場合には，血流量はほとんど不変なのに対し，RA（-）群では減少率25％と有意の低下が見られた（p＜0.001）．これに対し，血管処理・吻合後の吻合部口側血流量は，IMA根部切離，SRA切離のいずれにおいても低下はするものの，クランプ時とは異なりその減少率には血管処理部位およびRAの有無により差を認めなかった．IMA根部結紮を行った10例に術後縫合不全はなく，IMA根部結紮はRAの有無にかかわらず，安全に行いうる妥当な術式と考えられた．

索引用語
adequacy of high ligation of the inferior mesenteric artery, low anterior resectin of the rectum, intraoperative laser doppler flowmetry, Riolan arcade, blood flow of anastomotic region

別刷請求先
山本　眞二　〒359　所沢市並木3-2　防衛医科大学校第1外科

受理年月日
1992年5月13日

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