症例報告
固有肝動脈損傷の3例
橋本 聡, 内村 正幸, 脇 慎治, 木田 栄郎, 神田 和弘, 成田 一之
県西部浜松医療センター外科
固有肝動脈損傷は腹部外傷や,胆道または胃癌のリンパ節郭清時突発的に発生する.われわれは固有肝動脈損傷の3例を経験した.1例は外傷性,ほかの2例は術中損傷によるものである.肝固有動脈の損傷は術後の腹部血管造影にて確認され,1例は術前後の血管造影を比較することができた.3例とも肝十二指腸靭帯とした側副血行の発達がみられ,一過性の肝機能異常を種々の程度で来したが,肝不全に陥ったものは無かった.しかし,1例は術後胆嚢の虚血性変化を,1例は術後10年目に肝硬変を来した.
肝固有動脈損傷の際は,側副血行路が温存されていれば救命的には血行再建は絶対必要というわけではなく,結紮も可能である.しかし,術後は肝不全予防と胆嚢壊死の予防を行い,退院後も肝機能の経過観察が必要と思われる.
索引用語
hepatic artery injury, inning of hepatic artery, operative complication of abdominal surgery
日消外会誌 25: 2368-2372, 1992
別刷請求先
橋本 聡 〒852 長崎市坂本町7-1 長崎大学医学部第2外科
受理年月日
1992年5月13日
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