症例報告
肝細胞腺腫の1切除例
小林 利彦, 佐野 佳彦*, 大久保 忠俊*, 小川 博**, 椙村 春彦**, 喜納 勇**
浜松医科大学第1外科, 富士宮市立病院外科*, 浜松医科大学第1病理**
症例は54歳の女性.経口避妊薬など服用歴なし.肝内space-occupying lesionを指摘され入院となった.貧血,黄疸なくalphafetoproteinは正常範囲内であった.Ultrasonographyやcomputed tomography(CT)において肝右葉に径約3 cmの腫瘤を認め,同部は血管造影でhyper-vascularityを呈していたため肝細胞癌を疑ったが,リピオドールCTにて集積像なく,経上腸管膜動脈の門脈CTにおいて軽度濃染する点などからやや否定的でもあった.術式としては腫瘤を含めた肝部分切除ならびに胆摘術を行った.腫瘤は軟らかく暗緑茶色を呈しており,周囲肝とは境界明瞭な3.2×2.2×3.7 cmの充実性腫瘤であった.組織学的にはやや大型の細胞の増殖と肝細胞索の乱れを認め,腫瘍細胞はグリコーゲンに富み,lipochromeを多量に含んでいた.腫瘤内には胆管系組織は存在せず,肝細胞腺腫と診断された.なお背景肝には慢性炎症を認めるも硬変像はなかった.
索引用語
liver cell adenoma, oral contraceptives
日消外会誌 25: 2373-2377, 1992
別刷請求先
小林 利彦 〒431-31 浜松市半田町3600 浜松医科大学第1外科
受理年月日
1992年5月13日
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