症例報告
胃癌手術後に肝門部リンパ管の嚢状拡張を来した1例
金子 健一朗, 伊藤 喬廣, 安藤 久實, 原 春久*
名古屋大学分院外科, 協立総合病院外科*
肝十二指腸間膜のリンパ節郭清では肝の主要なリンパ路は切断される.通常は問題とならないが,われわれは胃癌手術後,肝門部のリンパ管の嚢状拡張を来したまれな例を経験した.症例は58歳の男性で,胃癌のため幽門側胃切除・R2+12番リンパ節郭清(胃癌取扱い規約による)・胆嚢摘出術を施行した.術後に大量の腹水貯留を来したが保存的に治癒した.術後6か月して心窩部膨満感を来したため腹部超音波検査を施行したところ,門脈左枝に沿い無エコー域が認められた.無エコー域の穿刺・吸引によって得られた内容液は淡黄色透明で高蛋白であり,血清とほぼ等しい電解質濃度など肝リンパの性状を呈していた.穿刺造影ではくびれをもつ脈管様構造が描出された.経皮経肝リンパ液ドレナージにより治癒した.
索引用語
dilatation of the lymphatic vessels, distal gastrectomy with lymph node dissection
日消外会誌 25: 2378-2382, 1992
別刷請求先
金子健一朗 〒461 名古屋市東区大幸南1-1-20 名古屋大学医学部附属病院分院外科
受理年月日
1992年5月13日
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