膵体尾部癌に対する腹腔動脈合併切除を伴う全胃温存膵体尾部切除術

中郡　聡夫, 三好　弘文, 角田　洋三, 竹内　英世, 岩下　力, 浅野　武秀^＊, 磯野　可一^＊

熊谷総合病院外科, 千葉大学第2外科^＊

　全胃を温存して消化吸収機能を考慮するとともに，腹腔動脈を根部から合併切除した膵体尾部切除により治癒切除しえた膵体尾部癌を経験したので報告する．症例は75歳の女性，食欲不振と体重減少を主訴に当院受診し，精査の結果，膵体尾部癌と診断された．入院時cartinoembryonic antigen 57.8 ng/ml，carbohydrate antigen 19-9 775 U/ml，elastase-1 510 ng/dlと腫瘍マーカーが高値を示した．腹部血管造影検査上，脾動脈は起始部から造影されず，脾静脈の閉塞も認めた．腹部超音波検査およびcomputed tomographyでも膵癌は腹腔動脈周囲まで浸潤していた．以上より，Appleby手術にならい腹腔動脈を根部より合併切除する膵体尾部切除術を施行するとともに，右胃大網動脈を温存して全胃を温存しえた．術後経過は順調で第21病日に退院した．本術式は根治性を高めると同時に消化吸収機能も温存しえる優れた術式で，膵体尾部癌に対して推奨しえる術式と考えられた．

索引用語
distal pancreatectomy, dissection of the celiac axis, preservation of the entire stomach

別刷請求先
中郡　聡夫　〒360　熊谷市中西4-5-1　熊谷総合病院外科

受理年月日
1992年5月13日

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