症例報告
脾内に波及した膵仮性嚢胞の2手術治験例
石部 良平, 田中 紘輝, 山田 和彦, 石崎 直樹, 西村 明大, 吉嶺 巡, 平 明, 松元 淳*
鹿児島大学第2外科, 同 第2内科*
脾内に発生した膵仮性嚢胞の2手術治験例を経験した.症例1は27歳の男性で,約10年間の飲酒歴を有していた.術前診断は脾嚢胞で開腹したが,膵尾部の強い炎症性癒着を認め膵尾部・脾合併切除術を施行した.嚢胞内容液のアミラーゼ値が63,600 So.Uと高値を示し,また病理組織学的にも脾内膵仮性嚢胞と診断された.症例2は40歳の男性で,飲酒歴は約20年であった.術前,腹部エコーなどにより脾内嚢胞を発見され,エコーガイド下に穿刺ドレナージが施行された.嚢胞内容液のアミラーゼ値が162,780 So.Uと高値であったため,脾内膵仮性嚢胞と診断し,膵尾部・脾合併切除術を施行した.本症はまれな疾患で,本邦では教室例を含めて27例の論文報告をみるのみである.また,嚢胞穿刺により本症を診断しえたものはわれわれの1例を含めて3例のみである.本症の治療として膵尾部・脾合併切除術が第1選択である.
索引用語
pancreatic pseudocyst involving the spleen, alcoholic pancreatitis, splenectomy and distal pancreatectomy
日消外会誌 25: 2421-2425, 1992
別刷請求先
石部 良平 〒890 鹿児島市桜ケ丘8-35-1 鹿児島大学医学部第2外科
受理年月日
1992年5月13日
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