直腸原発悪性リンパ腫の1例

宇高　徹総, 森山　重治, 花岡　俊仁, 大下　尚弘, 大橋　龍一郎

広島県厚生連府中総合病院外科

　消化管原発悪性リンパ腫のほとんどは胃，小腸で，直腸悪性リンパ腫は比較的まれである．
　症例は70歳の女性で，主訴は下血×直腸指診にて肛門輪より4 cmに下端をもつ前壁半周を占める硬い半球状の腫瘤を触知した．注腸造影で長径約6 cmの中心に陥凹をもつ隆起性病変を認めた．内視鏡検査で表面不整で中心に浅い陥凹を有する腫瘤を認め，生検の結果は悪性リンパ腫の疑いであった．手術は膣後壁部分切除を含む腹会陰式直腸切断術を施行した．大腸癌取扱い規約に従うと，A_i（膣），N_i（＋），P₀，H₀，M（-），stage IIIであった．病理組織化学的にdiffuse lymphoma，midium-sized cell type，B-cell（IgA，κ）であった．術後10日目に急性腎不全から多臓器不全に陥り，いったん回復したが誤嚥性肺炎にて術後8か月で死亡した．本稿では最近われわれが経験した直腸原発悪性リンパ腫の1例を加え，1981年から1992年までの本邦報告65例を集計し，臨床病理学的検討を行ったので，若干の文献的考察を加えて報告する．

索引用語
malignant lymphoma, rectum

別刷請求先
宇高　徹総　〒726　府中市鵜飼町555-3　広島県厚生連府中総合病院外科

受理年月日
1992年5月13日

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