原著
下部十二指腸動脈支配の検討―十二指腸温存膵頭全切除術の血行温存法に関連して―
梁 英樹, 羽生 富士夫*, 済陽 高穂*, 今泉 俊秀*, 中村 光司*, 鈴木 寧, 清水 泰, 新井 俊男*, 井戸 邦雄**, 小川 健二**, 小泉 淳**
至誠会第2病院外科, 東京女子医科大学消化器外科*, 慶応大学医学部放射線診断科**
本研究は十二指腸温存膵頭全切除術(本術式)の血行温存法を確立する一助として,下部十二指腸の動脈支配と,切除による同血流への影響を検討した.膵頭病変のない25例に上腸管膜動脈(SMA)および選択的下膵十二指腸動脈(IPD)造影を施行.下部は上腸間膜静脈(SMV)右縁から第1空腸動脈(J1)の最近位反回枝までと定義し,その十二指腸(D)枝とIPDを読影,分類した.D枝は分岐様式から,A)群IPDとJ1の11例(44%),B)群IPDとJ1の吻合枝の6例(24%),C)群IPD単独の8例(32%)に分類,IPDはJ1と形成する共通幹から,あり16例(64%),なし9例(36%)に大別した.膵鉤状部の切除線をSMA上に想定すると,A)群のJ1走行異常と B)群のD枝偏在の各1例,c)群の共通幹なしの計6例24%では,下部の広範な血流障害が危惧された.この血行特性と本術式の適応が主に良性疾患である点を考慮すると,下部の血行温存には,SMV右縁での切除が安全であり,かつ妥当と思われた.
索引用語
blood supply of the distal duodenum, duodenum-preserving total pancreatic head resection, duodenal branches to the distal duodenum, inferior pancreaticoduodenal artery, common trunk with the first jejunal artery
日消外会誌 25: 2502-2506, 1992
別刷請求先
梁 英樹 〒157 世田谷区上祖師谷5-19-1 至誠会第2病院外科
受理年月日
1992年6月17日
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