原著
大腸多発癌の臨床病理学的検討
木村 臣一, 岩垣 博巳, 淵本 定儀, 野中 泰幸, 根津 真司, 日伝 晶夫, 折田 薫三
岡山大学第1外科
当科における大腸多発癌は358例中24例,6.7%であった.男女比は16:8で対照群と有意差なく,発病年齢は56.8歳で,対照群より4.4歳若かった.同時性多発癌では23病変中16病変,70.0%が第1癌腫の10 cm以内に存在し,10 cm以上離れた病変は進行癌が多かった.進行癌一早期癌の組合せが最多であったが,異時性では後発癌は全例進行癌であった.多発癌群では癌家族歴,他臓器重複癌の併存が高率の傾向があり,ポリープ併存率は83.3%で対照群より有意に高率であった.同時性症例で術前正診できたのは77.8%であり,正診不可能であったのは肛門側の癌腫のため,その口側の検索が不十分であったものがほとんどであった.
現在のところ,大腸多発癌の予測は困難であり,大腸癌を診断した場合は多発癌および他臓器重複痛を念頭に置き,他臓器も含めた十分な術前検査および術後の経過観察が必要であると考えられた.
索引用語
multiple colorectal cancers, synchronous colorectal cancers, metachronous colorectal cancers, preoperative examination of colorectal cancer, postoperative follow-up of colorectal cancer
日消外会誌 25: 2507-2511, 1992
別刷請求先
木村 臣一 〒700 岡山市鹿田町2-5-1 岡山大学医学部第1外科
受理年月日
1992年6月17日
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