症例報告
肝細胞癌を併存した早期の無症候性原発性胆汁性肝硬変症の1例
佐埜 勇, 川岸 直樹, 阿部 道夫, 土屋 誉, 里見 孝弘, 新井 元順, 九里 孝雄, 渡部 秀一, 伊藤 順造, 佐々木 幸則, 児山 香
いわき市立総合磐城共立病院外科
肝細胞癌を合併した非常にまれな抗ミトコンドリア抗体陰性の早期の無症候性の原発性胆汁性肝硬変症の1例を報告する.症例は71歳の男性で,近医で肝細胞癌を指摘され当院に手術目的で紹介入院.入院時自覚症状なく黄疸,貧血を認めず.腹部所見で心窩部に手拳大の腫瘤を触知するほか異常所見なし.血清学的検査では胆道系酵素が上昇し,HBs抗原陰性,HCV抗体陽性だった.腫瘍マーカーは正常範囲内だった.免疫学的検査ではIgMのみが軽度高値を示したほか正常であった.腹部超音波検査,コンピューター断層撮影,血管造影にて肝左葉外側区域の直径7.0 cmの肝細胞癌と診断し,肝左葉外側区域切除術施行.病理学的検査では,腫瘍部は高分化型のEdmondson II型の肝細胞癌で非腫瘍部には細胆管の増殖と中等大以下の小葉間胆管に炎症像のみられるstage 2の早期の原発性胆汁性肝硬変症と診断.経過順調で現在外来通院中である.
索引用語
precirrhotic primary biliary cirrhosis, hepatocellular carcinoma
日消外会誌 25: 2530-2534, 1992
別刷請求先
佐埜 勇 〒371 前橋市昭和町3-39-15 群馬大学内分泌研究所比較内分泌教室
受理年月日
1992年6月17日
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