症例報告
小腸全域から盲腸にかけて多発性狭窄をきたした腸結核の1例
平林 邦昭, 松村 千之, 升木 行雄*, 中林 洋**
東大阪生協病院外科, 耳原総合病院外科*, 同 病理**
症例は50歳の男性.発熱を主訴に来院し,胸部X線上肺結核を疑われ,抗結核剤投与後3週間目にイレウスに陥った.注腸造影検査では盲腸にApple Core像,内視鏡検査では盲腸の狭窄と炎症性ポリープ,輪状潰瘍を認め,生検ではクローン病と診断された.手術所見では,回盲部に腫瘤触知,小腸全域に40数箇所にも及ぶ狭窄を認め,かつ3×3 cm大の回腸潰瘍が直腸壁に穿通し癒着していた.切除標本では回盲部に帯状潰瘍,小腸には多数の卵円形潰瘍を腸間膜付着部対側上に認めた.病理学的には非乾酪性肉芽腫が多発しており診断に難渋したが,ごく一部の肉芽腫にLanghans巨細胞を全周に伴う乾酪性肉芽腫を認め,また潰瘍部において粘膜下層の肥厚所見に乏しく,腸結核と診断した.臨床的にも,病理学的にも,クローン病との鑑別上,興味ある病像を呈したまれな腸結核症例と考えられ,文献的考察を加え報告する.
索引用語
intestinal tuberculosis, multiple stenosis of intestine
日消外会誌 25: 2550-2553, 1992
別刷請求先
平林 邦昭 〒590 堺市協和町4-465 耳原総合病院外科
受理年月日
1992年6月17日
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