症例報告
直腸切断術術後にみられた壊死型虚血性大腸炎の1治験例
河田 直海, 斉藤 真悟, 鈴木 偉一, 船津 隆*, 小林 展章1)
町立津島病院外科, 同 内科*, 愛媛大学医学部第1外科1)
壊死型虚血性大腸炎(以下,本症)はいまだ致命率が高く留意すべき疾患である.最近,腹会陰式直腸切断術(Miles手術)術後30年で本症を発症した肝硬変併存例を経験し,救命しえたので報告する.
症例は78歳の女性で,3日間の便秘の後,突然左側腹部痛・水様下痢で発症し,ショック状態で緊急入院した.腹部全体に筋性防禦・圧痛・Blumberg徴候あり.急性腹膜炎の診断で,発症5時間後に緊急手術を行った.消化管穿孔はなく,脾結腸曲を中心に約25 cmが壊死していた.腸間膜動静脈に異常なく本症と診断し,切除後,口側断端を人工肛門に,肛門側断端は閉鎖した.術後人工呼吸などの厳重な管理を要したが回復した.
本症の原因は定説がなく,本例ではMiles手術による循環障害,肝硬変による鬱血・凝回線溶障害も一因と考えられた.救命には発症後速やかな手術以外には無く,切除および人工肛門造設が妥当な術式と考えられた.
索引用語
gangrene type of ischemic colitis, acute abdomen, liver cirrhosis
日消外会誌 25: 2569-2573, 1992
別刷請求先
河田 直海 〒798-33 愛媛県北宇和郡津島町高田丙15 町立津島病院外科
受理年月日
1992年5月13日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|