特集
手術侵襲時の生体反応におけるサイトカインの役割―とくにin vivoでの肝の反応を中心に―
齋藤 英昭, 福島 亮治, 橋口 陽二郎, 住田 敏之, 武藤 徹一郎
東京大学第1外科
われわれは侵襲時の生体反応におけるサイトカインの役割について, とくにin vivoでの肝を中心とした生体反応を検討した.実験的検討には意識下雑種成犬を用いinterleukin-1(IL-1)またはtumor necrosis factor(TNF)5 µg/kg/時を持続静注した.その結果,サイトカイン,とくにIL-1投与はよく知られている肝での生体反応としての糖・乳酸代謝やアミノ酸・蛋白代謝に類似した反応を引き起した.臨床的検討では,食道亜全摘術,胃幽門側切除術,肝硬変併存肝切除術などの術後の肝の急性相蛋白産生と血中IL-6値の密接な関連,さらに肝硬変併存患者でのIL-6による急性相蛋白産生障害が判明した.以上から,サイトカインは生体反応のメジエータで,糖・乳酸代謝や蛋白・アミノ酸代謝を亢進させる.しかし肝障害ではIL-6産生にもかかわらず急性相蛋白合成が障害され,サイトカインによる肝の生体反応は肝の状態に左右される.
索引用語
metabolic response to injury, cytokine, liver metabolism
日消外会誌 25: 2585-2589, 1992
別刷請求先
斎藤 英昭 〒113 文京区本郷7-3-1 東京大学医学部第1外科
受理年月日
1992年7月6日
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