特集
担癌患者における手術侵襲と生体反応
杉山 保幸, 佐治 重豊, 古田 智彦, 東 修次, 宮 喜一, 日下部 光彦, 山田 誠
岐阜大学第2外科
手術侵襲による担癌生体の免疫能低下に対する非特異的免疫療法の有用性について検討した.担癌ラットの末梢血単核球(PBMC)のPHA幼若化能やNK活性は手術侵襲の程度の増大に伴って低下し,肺転移も促進されたが,手術侵襲の加わる前にOK-432を投与しておくと,それらを防止できた.また,胃癌患者のPBMCのPHA幼若化能やNK活性は,手術の翌日より免疫療法を開始しても,術後1~2週目には術前に比べて有意に低下したが,術前から治療を施行した場合には低下がみられなかった.さらに,胃切除可能胃癌患者(ただしstage Iのうちm,n0を除く)275例を対象とした非特異的免疫療法に関する検討において,stage II症例で術前後免疫療法施行群の生存率が術後免疫療法施行群と比較して有意に優れていた.以上から,手術侵襲により免疫担当細胞の抗腫瘍活性は低下するものの,術前から免疫療法を開始することでそれを防止でき,予後にも好影響を及ぼすことが示唆された.
索引用語
surgical stress, cancer patients, nonspecific immunotherapy
日消外会誌 25: 2595-2600, 1992
別刷請求先
杉山 保幸 〒500 岐阜市司町40 岐阜大学医学部第2外科
受理年月日
1992年7月6日
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