胃癌治癒手術後患者におけるquality of lifeへの影響因子

熊井　浩一郎, 島田　敦, 才川　義朗, 宇山　一朗, 久保田　哲朗, 吉野　肇一, 石引　久弥, 北島　政樹

慶應義塾大学外科

　早期発見例の増加により胃癌の遠隔成績は著しく向上し，術後のquality of life（QOL）向上が課題となってきた．しかし，治癒切除後のQOL評価方法はいまだ確立されていない．
　今回，術後QOLへの影響因子を探るべく，外来通院中の患者へのインタビュー調査をおこなった．121名に対する第1次調査の結果，癌告知は14％程度で少数であった．術後1年末満は，手術の影響がなお残っていた．患者の満足度からの解析では，術後の食生活の変化，便通異常，治療中・後愁訴が影響因子となっていた．80名に対する第2次調査から食餌摂取量ではなく，油もの，肉類などの摂取困難を呈する食餌内容の変化が影響因子であった．術後QOL向上のため検討されている縮小手術の根治性は確認されたが，標準R₂手術と縮小R₁手術は，患者満足度への影響差は認められなかった．内視鏡的治療の評価や進行癌の術後QOLは今後の検討課題である．

索引用語
gastric cancer, quality of life after gastrectomy, factors influencing quality of life

別刷請求先
熊井浩一郎　〒160　東京都新宿区信濃町35　慶應義塾大学医学部外科

受理年月日
1992年7月6日

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