特集
肝硬変合併肝細胞癌における術後異時性多中心性発癌とquality of lifeよりみた切除術式の検討
奥田 康司, 才津 秀樹, 中山 和道
久留米大学第2外科
肝硬変合併肝細胞癌147例において,術後異時性多中心性発癌と術後quality of life(QOL)を中心として部分切除と系統的切除の比較を行った.5年生存率は部分切除45.0%,系統的切除42.9%で,両者に差は認められなかった.再発例24例の再発腫瘍と切除腫瘍の組織学的分化度の比較検討からは14例(58.3%)が術後異時性多中心性発癌による再発で,9例(37.5%)が転移再発と考えられ,また転移再発例においても9例中7例が他区域におよぶ再発であり,肝硬変合併肝細胞癌においての系統的亜区域,区域切除の意義は薄いと考えられた.また,手術入院期間や術後入院・生存期間比からは,系統的切除より部分切除の方が,また肝硬変の程度の軽いものの方が入院期間が短く,術後のQOLの点からも部分切除の妥当性が示唆された.しかし,アンケート調査によるQOL評価の試みは術式および硬変程度で一定の傾向が認められず,客観的評価方法の困難さが指摘された.
索引用語
hepatocellular carcinoma, multicentric carcinogenesis, quality of life
日消外会誌 25: 2640-2646, 1992
別刷請求先
奥田 康司 〒830 久留米市旭町67 久留米大学第2外科
受理年月日
1992年7月6日
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