特集
根治性とquality of lifeからみた膵癌切除術式の適応と限界
石川 治, 大東 弘明, 今岡 真義, 亀山 雅男, 佐々木 洋, 甲 利幸, 古河 洋, 岩永 剛
大阪府立成人病センター外科
1990年までに治癒切除した膵管癌111例を,標準郭清(R1:45例)と拡大郭清(2群リンパ節および結合織郭清,R2α:66例)に分け,根治性とquality of life(QOL)を比較した.耐術例(R1:39例,R2α:63例)の背景因子に著差はなかったが,R1群の3,5年生存率10%,8%と比べ,R2α群ではおのおの35%(p<0.05),23%と改善していた.R1群での3年生存者(4例)の大半はn(-),rp(-)であったが,R2α群(16例)ではn(+),rp(+),門脈浸潤例にも見られた.しかし,R2α群でもt3,n2,両側または1.4 cm以上の門脈浸潤例では3年生存が期待できなかった.3年生存例でQOLを比較すると,R2α群はR1群よりも不良で,体重やperformance status(PS)が安定するまでには約1年を要し,半数が栄養管理などの目的で再入院していた.一方,再発死亡例(両群とも平均1年生存)では,PS=0/1期間,全入院期間などからみてR2α群の方が不良で,QOLの改善しないまま死亡していたと推察された.
索引用語
pancreas cancer, extended lymphadenectomy, quality of life
日消外会誌 25: 2661-2665, 1992
別刷請求先
石川 治 〒537 大阪市東成区中道1-3-3 大阪府立成人病センター外科
受理年月日
1992年7月6日
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