症例報告
残胃悪性リンパ腫の1例
辻 福正, 木村 文敏, 山崎 良定, 山中 陽一*, 山本 雅彦**
公立宍粟郡民病院外科, 山中医院*, 姫路聖マリア病院外科**
胃癌にて胃切除術後30年目に,残胃に悪性リンパ腫が生じたまれな症例を1例経験し,本邦報告の13例についても検討したので報告する.症例は74歳の女性.主訴は食欲不振,左季肋部痛.既往歴は30年前に胃癌にて胃切除をうけた.胃体上部大彎側後壁に結節状の隆起性病変を認め,malignant lymphomaの診断を得,残胃全摘,脾,膵尾部合併切除を施行した.病理所見はdiffuse lymphoma medium sized cell typeあるいは,mixed typeであった.術後経過はCHOP-Bを4クール施行するも術後11か月で死亡した.手術にて治癒切除できたと思われる症例でも,悪性リンパ腫は全身疾患であるから,厳重な経過観察が必要である.適切な化学療法を検討しつつ,柔軟な治療方針で臨むことも必要と考えられた.残胃悪性リンパ腫は比較的進行例が多く,残胃にも十分に注意すべきである.
索引用語
malignant lymphoma, residual stomach
日消外会誌 25: 2968-2972, 1992
別刷請求先
辻 福正 〒671-25 兵庫県宍粟郡山崎町鹿沢93 公立宍粟郡民病院外科
受理年月日
1992年9月9日
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