症例報告
肝動脈塞栓術により肝転移の消失した非機能性膵島細胞癌の1例
天野 穂高*, 横山 健郎, 柏原 英彦, 蜂巣 忠, 大森 耕一郎, 坂本 薫, 鈴木 孝雄*, 一瀬 雅典*, 神宮 和彦*
国立佐倉病院外科(*現・千葉大学医学部第2外科)
肝転移を伴う非機能性膵島細胞癌に対し集学的治療を行い,長期生存の得られている1例を経験した.症例は60歳の女性で,腹部腫瘤を主訴に来院した.諸検査にて,多発性の肝転移を伴った膵体尾部の非機能性膵島細胞癌と診断した.手術は膵体尾部切除,肝動脈カニュレーションを施行した.病理組織所見では索状およびリボン状の組織構築を示し,免疫組織化学的検査ではInsulin,Glucagon,Gastrin,Somatostatinは証明されず非機能性膵島細胞癌と診断した.また,試験切除した肝転移巣も同様の所見であった.肝転移はtranscatheter arterial embolization(TAE)などにより画像診断上消失し,術後3年8か月経過した現在complete responseの状態が続いており,外科的治療とTAEによる集学的治療が長期生存を可能にしていると考えられた.
索引用語
nonfunctioning islet cell carcinoma, liver metastasis, transcatheter arterial embolization
日消外会誌 25: 3002-3006, 1992
別刷請求先
天野 穂高 〒260 千葉市中央区亥鼻1-8-1 千葉大学医学部第2外科
受理年月日
1992年9月9日
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