症例報告
門脈ガス血症を伴なった急性上腸間膜動脈閉塞症の1救命例
桑原 義之, 片岡 誠, 佐藤 篤司, 呉山 泰進, 川村 弘之, 三谷 真巳, 岩田 宏, 坂上 充志, 加島 健利, 篠田 憲幸, 服部 浩次, 神谷 武*, 正岡 昭
名古屋市立大学第2外科, 同 第3内科*
症例は心疾患,脳梗塞症の既応をもつ54歳の男性で,突然の腹痛にて発症した.腹部computed tomography,腹部超音波断層像にて門脈内ガス像を認め,腹部血管造影にて,急性上腸間膜動脈閉塞症と診断した.手術所見ではトライツ靭帯より約60 cmから80 cmまでの部分(1)と145 cmから上行結腸中央部までの部分(2)の腸管が壊死した状態であった.また,壊死腸管のmarginal vein内には,多数の気泡が認められた.手術は(1)と(2)の壊死腸管を別々に切除し,それぞれ端々吻合した.残存小腸は約120 cmであった.切除標本では,壊死腸管の粘膜内に径1 mm前後の小気泡が多数存在し,pneumatosis intestinalisの状態と考えられた.術後経過は,比較的良好で,術後第35病日に軽快退院した.門脈ガス血症を伴う上腸間膜動脈閉塞症の救命例は本邦にはなく,欧米においても,現在までに2例の報告をみるのみで,自験例はまれな症例と思われた.
索引用語
superior mesenteric arterial occlution, portal venous gas in the liver
日消外会誌 25: 3007-3011, 1992
別刷請求先
桑原 義之 〒467 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1 名古屋市立大学医学部第2外科
受理年月日
1992年7月6日
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