症例報告
胃癌術後虫垂転移による急性虫垂炎の1例
田中 達郎, 今野 弘之, 丸尾 祐司, 西野 暢彦, 松田 巌, 青木 克憲, 馬場 正三
浜松医科大学第2外科
転移性虫垂癌はまれな疾患であり,本邦において今までに16例の報告を見るのみである.われわれは今回長期生存中の胃癌虫垂転移例を経験したので報告する.
症例は76歳の男性で,Borrmann 3型胃癌に対する治癒切除術施行後,経過観察を行っていたが,術後4年6か月目に下腹部痛と発熱が出現した.急性虫垂炎による汎発性腹膜炎と診断し,虫垂切除術を施行した.肉眼的には虫垂は根部を除き全長に渡り壊死に陥っていたが,腹膜播種の所見はなかった.病理組織学的検索では,虫垂の粘膜下層から漿膜にかけて低分化型腺癌細胞の小集塊が多数浸潤し,一部腺管構造を呈していることより,胃癌虫垂転移と診断した.虫垂切除術後2年1か月,初回術後6年7か月現在再発の徴候なく健在である.
癌患者における虫垂炎症状の出現に対しては,虫垂転移の可能性を念頭に入れる必要があるものと思われた.
索引用語
appendiceal metastasis of gastric cancer, acute appendicitis caused by metastatic carcinoma
日消外会誌 25: 3012-3015, 1992
別刷請求先
田中 達郎 〒431-31 浜松市半田町3600 浜松医科大学第2外科
受理年月日
1992年7月6日
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