胸部食道癌組織におけるmatrix metalloproteinase-2の発現とその臨床的意義

島　一郎, 掛川　暉夫, 山名　秀明, 藤田　博正, 笹栗　靖之^＊, 森松　稔^＊

久留米大学第1外科, 同　第2病理^＊

　食道癌におけるmatrix metalloproteinase-2（MMP-2）の発現を免疫組織学的に検索し，その臨床的意義について検討した．対象は術前未治療の胸部食道癌89例（表在癌47例，進行癌42例）で，パラフィン包埋切片を使用し，MMP-2のポリクローナル抗体を用いて免疫組織化学染色により検討し，以下の結果を得た．1．非癌部正常食道上皮ではMMP-2は全例陰性であった．2．癌部では28例（31.5％）に発現を認め，腫瘍先進部や癌胞巣辺縁に強い発現を認めた．3．MMP-2発現と臨床病理学的諸因子との検討では，深達度（p＜0.05），脈管侵襲（p＜0.01），腫瘍先進部浸潤形式（p＜0.05），術後再発（p＜0.01）との間に有意な関連が認められた．
　以上よりMMP-2は食道癌の浸潤・転移に深く関与していることが示唆され，細胞外マトリックス分解酵素からみた癌腫の悪性度指標となりうるものと考えられた．

索引用語
esophageal cancer, matrix metalloproteinase-2, type IV collagenase, extracellular matrix, metastasis

別刷請求先
島　一郎　〒830　久留米市旭町67　久留米大学第1外科

受理年月日
1992年9月9日

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