原著
胃切開創の創傷治癒とepidermal growth factorについての実験的研究
市川 靖史
横浜市立大学医学部第2外科
細胞増殖因子であるepidermal growth factor(EGF)の胃切開縫合創の治癒に対する影響について実験的に検討した.ラットを対照群,胃切開後48時間までEGFを投与した群に加えて,内因性EGFを低下させる目的で両側顎下腺を摘出したsubmandibular glands removal(SMR)群とSMRラットにEGFを投与したSMR+EGF群の4群に分けた.なおEGF(20 µg/kg)を投与した群では胃手術前1時間,術後24,48時間に静注した.胃手術後3,7日目に胃切開創の組織血流量,新生毛細血管の構築および量,抗張力および組織化学的観察による局所コラーゲン組織化学的所見から創傷治癒を検討した.各項目について,EGF群と対照群の間には有意差はなかったが,SMR群では抗張力,組織血流量,毛細血管新生の低下が認められた.SMR+EGF群では,投与後,各項目は対照群と同程度まで回復した.EGFは毛細血管新生と組織血流維持に必要であり,胃切開創の創傷治癒に重要な役割を持つと考えられた.
索引用語
epidermal growth factor, wound healing of stomach, vascular structure of the gastrotomy wound, neovascularization in the gastrotomy wound, microcirculation in the gastrotomy wound
別刷請求先
市川 靖史 〒236 横浜市金沢区福浦3-9 横浜市立大学医学部第2外科
受理年月日
1992年9月9日
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