原著
肝切除における術中の高カリウム血症に関する臨床的検討
福本 巧, 具 英成, 山本 正博
神戸大学医学部第1外科(主任:斎藤洋一教授)
肝切除術中の高カリウム(K)血症の発生頻度,成因および臨床上の問題点を検討した.肝切除例64例のうち術中の血清カリウムの最高値が5 mEq/L以上を示した高K群は7例(11%)で,うち3例(4.7%)が6 mEq/L以上の上昇を認め,T波増高(2例)や心室細動(1例)などの心電図異常を来した.高K群,非高K群(5 mEq/L未満)の背景因子を比較すると,術前因子ではGOT,GPTが高K群で有意に高かった(p<0.05)が,ChE,ICG停滞群,肝硬変合併率は両群間で差が認められなかった.腎関連因子には差が認められなかった.術中因子では肝血流遮断延べ時間が高K群で有意に長く(p<0.05),術中の血清Kの最高値との間で有意な相関を認めた(r=0.43).また平均輸血量は高K群で有意に多かった(p<0.05)が,手術時間,術式には差が認められなかった.以上よりGOT,GPT高値例,大量輸血例および肝血流遮断時間遷延例では高K血症を念頭においた術中管理が必要と思われた.
索引用語
hyperkalemia, hepatectomy, hepatic vascular clamping
別刷請求先
具 英成 〒650 神戸市中央区楠町7-5-2 神戸大学第1外科
受理年月日
1992年9月9日
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