原著
肝再生因子としての小腸血の実験的検討
橋本 直樹, 西脇 学, 西岡 昭彦, 芦田 寛, 琴浦 義尚, 宇都宮 譲二
兵庫医科大学第2外科
肝再生因子としての門脈血の意義は,以前より報告されている.今回,われわれは,門脈因子の中で,膵島ホルモンと小腸因子では,どちらが肝にとって大切かを検討するため雑種成犬(10 kg~15 kg)に以下のモデルを作成した.(1)脾静脈血のみをsystemicへdiversionするsplenocaval shunt,sc shunt(n=5)(2)小腸血のみをsystemicへdiversionするpartial mesocaval shunt(partial MC shunt)n=5(3)sham operation n=5を作成し,術後4週目,アミノ酸,肝ATP,肝血流,一般肝機能を比較し,肝に対する影響を検討した.アミノ酸,一般肝機能,肝血流においては,両群ともコントロールと比較し差は,認められなかった.しかし,肝ミトコンドリア呼吸能を反映する肝ATPにおいては,sc shuntでは,コントロールに近似したが,P-MC shuntは,コントロールに比べ有意に低値をとり,門脈血の中で小腸血は,膵ホルモンより肝にとって重要なことが示唆された.
索引用語
hepatotrophic factors, hepatic ATP, partial mesocaval shunt, splenocaval shunt, Eck fistula
別刷請求先
橋本 直樹 〒663 西宮市武庫川町1-1 兵庫医科大学第2外科
受理年月日
1992年9月9日
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