食道癌術後の挙上胃管に発生した潰瘍の1例

岡本　哲彦, 磯部　陽, 有森　正樹

国立東京第2病院外科

　食道癌術後2年8か月目に下血を主訴に再入院し，内視鏡検査にて胃管潰瘍を確認した症例を報告する．患者は54歳の男性．タール便に気付いて来院．入院後内視鏡検査を施行し胃管内に潰瘍を発見した．生検で悪性所見はなかった．輸血，H₂-blocker，proton pump inhibitor投与で保存的に治癒した．経過中血清ガストリン値は高値を持続した．ガストリン刺激による胃液検査でbasal acid output（以下BAO）maximal acid output（以下MAO）とも低値であった．またメモリー式pHメーターで連続胃管内pHを測定した．基礎酸分泌能が低いためと思われる夜間胃内pH逆転現象が認められた．
　胃内pH3以上の時間帯は約70％であった．胃管造影では内容の停滞は認められなかった．潰瘍の成因として胃管挙上による粘膜血流減少などの防禦因子の障害も関与しているものと考えられた．患者は外来で経過観察中であるが，元気に社会復帰している．

索引用語
peptic ulcer, gastric tube for esophageal replacement, postoperative complication in the esophageal cancer

別刷請求先
岡本　哲彦　〒152　目黒区東が丘2-5-1　国立東京第2病院外科

受理年月日
1992年9月9日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です