特発性上腸間膜静脈・門脈血栓症の1例

松橋　亘, 原口　義座, 長谷川　俊二, 大沢　寛行, 切田　学, 梅津　荘一, 永田　伝, 斉藤　慶一

東京警察病院外科

　上腸間膜静脈血栓症は重篤な疾患ながら急性腹症としてはまれで，また非特異的症状と緩徐な病状進行から術前診断が困難なことが多い．今回造影CTで術前診断しえた上腸間膜静脈血栓症を経験し，報告するとともに病因についても言及した．症例は47歳の男性，主訴は腹痛．発症後12日目に入院精査となった．左上腹部に拡張腸管を触知した．腹部単純CTで腹水，肥厚した腸間膜と小腸を認めた．造影CTで中心に血栓による陰影欠損を呈する上腸間膜静脈を認め，上腸間膜静脈血栓症と診断し発症後13日目手術施行した．血性腹水と空腸の鬱血性壊死を認め170 cmの空腸切除を施行した．術中血栓の進展を認め，追加切除とともに断端の血流状態を観察する目的で空腸・回腸瘻を造設した．術後の血管造影では上腸間膜静脈・門脈に広範な血栓を認めた．凝固線溶系には原因と考えられる病態はなく特発性と診断した．血栓融解剤と抗血小板剤を投与し術後39日目に腸瘻閉鎖，60日目に退院した．

索引用語
superior mesenteric vein thrombosis, portal vein thrombosis, bowel necrosis

別刷請求先
松橋　亘　〒102　千代田区富士見2-10-41　東京警察病院外科

受理年月日
1992年9月9日

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