卒後教育セミナー
腹部実質臓器損傷の治療
小林 国男
帝京大学救命救急センター
腹部実質臓器損傷の主病態は出血であり,治療手段の中心は開腹による止血である.しかし,画像診断の進んだ最近では,腹腔内出血量の推定や実質臓器損傷の程度を術前に診断することが可能であり,保存的治療の症例が増加している.われわれの施設における過去8年間の肝損傷156例,脾損傷100例,膵損傷23例,腎損傷67例をそれぞれ日本外傷研究会の損傷形態分類に従って分け,損傷形態別の治療法を集計した.その結果,ある損傷形態では非手術的に十分治療が可能であり,日本外傷研究会の損傷形態分類は治療方針を決めるのに妥当なものと考えられた.
腹部実質臓器損傷の保存的治療に当たっては注意深い経過観察が必要である.また,開腹手術を行うに当たっては最小限の手術侵襲にとどめ,患者の状態によっては一時的圧迫止血とsecond look operationを考慮することも大切である.
索引用語
blunt abdominal trauma, hepatic injury, surgical management
別刷請求先
小林 国男 〒173 板橋区加賀2-11-1 帝京大学救命救急センター
受理年月日
1992年10月7日
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