原著
胸部食道癌における縮小郭清術式の可能性について
松原 敏樹, 植田 守, 奥村 栄, 中島 聰總, 西 満正
癌研究会附属病院消化器外科
頸胸境界部を含めた標準郭清術式および縮小術式施行例の臨床像から合理的な食道癌のリンパ節郭清範囲の縮小化について検討した.
深達度筋層までの癌(a0癌)では術前評価N(-)の例で中下縦隔転移例はなかった.転移個数1個のみの例やa0癌症例では中下縦隔と比較して反回神経沿線や胃上部周囲のリンパ節のほうがきわだって転移を呈しやすかった.後2者のどちらにも転移がない場合には中下縦隔の転移率は低く,とくにa0癌ではこのような例はなかった.a0癌では中下縦隔のなかでは左肺靭帯内リンパ節が比較的早期に転移を呈しやすい傾向がみられた.中下縦隔再発はa0癌ではみられなかった.縮小術式症例では高度進行例を除いて縦隔再発はなかった.
縮小術式においても反回神経沿線と胃上部の郭清は必要である.進行度が比較的早期の癌やa0癌では,poor risk例の縮小手術として左開胸や非開胸で上縦隔下部や中下縦隔の郭清を省略する術式が合理的と考えられる.
索引用語
esophageal cancer, limited operation for esophageal cancer, surgery for cancer of the thoracic esophagus, lymph node dissection in cancer of the thoracic esophagus
別刷請求先
松原 敏樹 〒170 豊島区上池袋1-37-1 癌研究会附属病院消化器外科
受理年月日
1992年10月7日
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