選択的近位迷走神経切離術を施行した十二指腸潰瘍穿孔例と非穿孔例の術後経過

近藤　泰理, 生越　喬二, 中村　健司, 宮治　正雄, 岩田　邦裕, 原　俊介, 田島　知郎, 三富　利夫

東海大学医学部外科

　1978年から1990年に選択的近位迷走神経切離術（SPV）を施行した十二指腸潰瘍穿孔例86例，非穿孔例33例の計119例を対象とし，術後5年までの基礎酸分泌量，テトラガストリン刺激時の最大酸分泌量（gastrin-MAO），インスリン刺激時の最高酸分泌量（insulin-PAO），血中ガストリン分泌反応，胃排出能，Kaplan―Meier法を用いた術後累積再発率を検討した．非穿孔例は術後高ガストリン血症を，穿孔例は術後高酸を示すが，1年以後は一定状態となる傾向がみられた．術後潰瘍再発例は穿孔例86例中8例（9.3％），非穿孔例33例中9例（27.2％）で術後10年累積再発率はそれぞれ26.6％，31.6％であった．穿孔例の術後1年のgastrin-MAOが20 mEq/h以上の症例または術後1年のinsulin-PAOが12 mEq/h以上の症例の累積再発率がそれ未満であった症例に比べ有意に高値を示したことより，SPV術後1年時にgastrin-MAOやinsulin-PAOが高値を示す症例は消化性潰瘍の再発をきたしやすいものと考えられた．

索引用語
selective proximal vagotomy, gastric acid secretion, postoperative recurrent ulcer, perforated duodenal ulcer, gastrin

別刷請求先
近藤　泰理　〒259-11　伊勢原市望星台　東海大学医学部外科

受理年月日
1992年10月7日

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