症例報告
多分化増殖能を示唆したalpha-fetoprotein産生胃癌の1例
松田 哲朗, 赤木 重典
国保久美浜病院外科
最近われわれは,術後経過中肝転移を呈し,血清carcinoembryonic antigen(CEA),carbohydrate antigen 19-9(CA19-9)高値,alpha-fetoprotein(AFP)陰性となったAFP産生胃癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は84歳の男性.C領域のBorrmann 3型進行胃癌にて胃全摘術を施行した.術前血清AFP 39.4 ng/mlと高値を呈し,病理組織学的にも腫瘍内にAFPの局在を証明しえた.術後10か月目に肝転移をきたしたが,その時の血清AFPは陰性化しており,CEA,CA19-9が高値を呈した.腹水,および肝転移腫瘍嚢胞液にても同様のパターンを認めた.AFP産生胃癌は,肝転移を含め,腫瘍の増大とともに血清AFPが上昇するといわれているが,本症例のごとく他の腫瘍マーカーが高値になる場合は,腫場が分化増殖形式の異なるさまざまな細胞から構成されていることも推測され,予後予測のためには,種々の腫瘍マーカーの変動について十分注意する必要があると思われる.
索引用語
alpha-fetoprotein producing cancer, tumor markers, liver metastasis
別刷請求先
松田 哲朗 〒629-34 京都府熊野郡久美浜町161 久美浜病院外科
受理年月日
1992年10月7日
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