胆管癌術後に肝門部挙上空腸静脈瘤から出血した門脈圧亢進症の1例

片田　夏也^1）2）, 別所　隆^1）3）, 大西　英胤^1）, 篠原　央^1）, 栗原　博明^1）, 郭　宗宏^1）, 徳永　信弘^1）, 高橋　厚^1）2）

国立大蔵病院外科^1）, 北里大学病院外科^2）, 伊勢原協同病院外科^3）

　胆管癌術後に頻回の大量消化管出血を認め，出血源の診断に難渋した特殊な門脈圧亢進症の1例を経験したので報告する．症例は59歳の男性．中部胆管癌の診断にて胆管切除，肝門部空腸吻合術（Roux-en-Y）施行．術後1年6か月頃より頻回の大量消化管出血を認め出血源の診断に難渋したが，最終的に血管造影を施行したところ，癌再発により肝外性門脈閉塞から門脈圧亢進症を生じ，肝門部挙上空腸に生じた求肝性静脈瘤からの出血と診断した．治療として，拡張空腸静脈―下大静脈H―シャント術および拡張空腸静脈のbandingを施行した．その後大量の消化管出血は消失したが，患者はその11か月後に癌再発より肺転移を生じ死亡した．剖検により肝門部挙上空腸の静脈瘤が確認された．本症例のように，胆管癌術後の挙上空腸に異所性静脈瘤が生じ出血を来した報告例は全く認めず，極めて興味ある症例と思われた．

索引用語
portal hypertension, porto-jejunal varices, bile duct cancer

別刷請求先
片田　夏也　〒228　相模原市北里1-15-1　北里大学病院外科

受理年月日
1992年10月7日

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