胆嚢癌を重複した膵多形細胞癌の1例

吉田　和彦, 藤川　亨, 片山　隆市, 西田　雄, 岡部　紀正

神奈川県衛生看護専門学校付属病院外科

　胆嚢癌を重複した膵多形細胞癌（pleomorphic carcinoma）を経験したので報告する．症例は64歳の男性で上腹部痛，タール便と体重減少を主訴に当科へ入院した．上部消化管造影では胃体部大彎にBorrmann l型の病変を認め，内視鏡的生検では未分化癌と診断された．腹部CT scan検査と腹部超音波検査では胆嚢壁の不整と肥厚を認めた．胃と胆嚢の重複癌の術前診断で開腹したが，術中に膵頭部と十二指腸の病変が発見されたので，拡大胆嚢摘出術と膵頭十二指腸切除術を施行した．摘出標本では膵頭部の腫瘍は膵多形細胞癌と診断され，病理学的所見より胃と十二指腸の病変はその転移巣と考えられた．胆嚢の粘膜全域には乳頭状の発育を示す高分化型腺癌を認め，本邦では最初の他臓器重複癌を合併した膵多形細胞癌と考えられた．

索引用語
pleomorphic carcinoma of the pancreas, gallbladder carcinoma

別刷請求先
吉田　和彦　〒235　神奈川県横浜市磯子区汐見台1-6-5　神奈川県衛生看護専門学校付属病院外科

受理年月日
1992年10月7日

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