症例報告
原発性硬化性胆管炎の経過中に胆管癌の併発を認めた1例
西村 好晴, 竹中 博昭, 岩瀬 和裕, 吉留 克英, 大西 隆仁, 高垣 元秀, 石坂 透, 別所 俊哉, 大畑 俊裕, 井上 匡美, 大嶋 仙哉, 田中 智之*
社会保険紀南綜合病院外科, 同 病理*
原発性硬化性胆管炎(PSC)として経過観察中に胆管癌の併発を認めた1例を経験したので報告した.症例は32歳の女性で,閉塞性黄疸にて入院し,内視鏡的逆行性胆管造影および経皮経肝胆管造影にて総担管は3管合流部で限局性に閉塞していた.胆管癌との診断のもと,開腹したところ切除不能の胆管癌が疑われたが,総胆管狭窄部の組織所見で悪性所見は認めなかった.内瘻化チューブを留置し,PSCとして3年5か月にわたる経過観察を行った.その間,チューブの閉塞を繰り返したため,再手術の適応とした.肝左葉は萎縮していたため,肝左葉切除,胆管切除,右肝管空腸吻合術を施行した.組織学的には総胆管閉塞部には悪性所見は認めなかったが,肝左葉の1部に胆管癌の併存を認めた.PSCに胆管癌を併発した症例は本邦において2例が報告されているに過ぎないが,PSCの取り扱いに際しては,胆管癌併発に注意する必要があると考えられた.
索引用語
primary sclerosing cholangitis, cholangiocarcinoma
別刷請求先
竹中 博昭 〒646 田辺市湊510 社会保険紀南綜合病院外科
受理年月日
1992年10月7日
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