症例報告
粘液産生性膵嚢胞腫瘍の拡張主膵管に上皮内癌が発生した1例
高橋 優, 臼井 律郎, 渡辺 新吉, 宮川 英喜, 本田 毅彦, 阿部 眞秀*, 古川 徹1)
東北厚生年金病院外科, 同 内科*, 東北大学抗酸菌病研究所病理1)
粘液産生性膵嚢胞腫瘍の拡張した主膵管に上皮内癌を認め,免疫組織学的に診断できた症例を経験したので報告する.症例は76歳の男性で,5年前より膵尾部嚢胞と主膵管の拡張を指摘されていたが,最近,血清CEA(7.7 ng/ml),CA19-9(90 U/ml)の異常値,膵嚢胞の腫大,さらに内視鏡的逆行性膵管造影検査で粘液の排出,主膵管のびまん性拡張と透亮像を認めたため,悪性化を疑い膵体尾部切除術を施行した.嚢胞は膵体尾部の全域に多発し,割面で主膵管と交通していた.切除標本を1.5 mm間隔で全割し組織学的に検討すると,嚢胞壁と主膵管はmild dysplasiaを示していたが,主膵管上皮の一部に核腫大,クロマチン増量,核小体明瞭,細胞極性の消失した細胞群を認め,上皮内癌と診断した.免疫組織学的検索では,CEAは上皮内癌の細胞腺腔側と細胞質内部に強く染色されたが,嚢胞部分ではほとんど染色されなかった.一方,CA19-9は上皮内癌と嚢胞の細胞腺腔側に染色された.
索引用語
pancreatic mucin-producing cystic tumor, carcinoma in situ, immunohistological CEA staining
別刷請求先
高橋 優 〒973 いわき市内郷御厩町久世原16 いわき市立総合磐城共立病院外科
受理年月日
1992年11月11日
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