症例報告
血清CA19-9高値を呈した脾類表皮裏胞の1例
島多 勝夫, 桐山 誠一, 山下 芳朗, 唐木 芳昭, 田沢 賢次, 藤巻 雅夫, 都築 重利*, 北原 修一郎*, 稲葉 鋭**
富山医科薬科大学第2外科, 信州大学第1外科*, 信州大学病理学教室**
比較的まれとされる血清CA19-9高値を呈した脾類表皮嚢胞の1例を経験したので報告する.
症例は9歳の女児で,上腹部膨満感を主訴に来院した.左肋骨弓下に比較的軟らかい巨大腫瘤を触知し,画像上,巨大脾嚢胞と判明,術前の経皮的吸引細胞診では扁平上皮細胞の混在を認めた.また血液学的検査では,血清CA19-9が860 U/mlと高値を呈した.以上より,脾類表皮嚢胞の診断のもと脾摘出術を施行した.病理組織学的には嚢胞壁は重層扁平上皮におおわれており,免疫特殊染色(CA19-9,CEA)にて同上皮細胞に一致して強い陽性所見を認めた.術前高値を呈した血清CA19-9は,脾摘術後約1か月で正常化した.血清CA19-9高値を呈した脾類表皮嚢胞の報告は,これまでに2例報告されているのみである.症例によってはCA19-9が本疾患における補助診断の指標になりうると思われた.
索引用語
epidermal cyst of the spleen, CA19-9, splenectomy
別刷請求先
島多 勝夫 〒930-01 富山市杉谷2630 富山医科薬科大学第2外科
受理年月日
1992年11月11日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|