症例報告
肺癌転移による小腸穿孔の1例
小林 道也, 緒方 卓郎, 荒木 京二郎, 松浦 喜美夫, 金子 昭, 杉藤 正典, 山本 拓, 竹下 篤範*
高知医科大学第1外科, 竹下病院*
穿孔をきたした肺癌の小腸転移症例を経験したので報告する.症例は73歳の男性,急性腹症で紹介入院.腹部単純写真でfree airを認め,消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断し緊急開腹術を施行した.空腸に穿孔を認め,この部を切除した.病理組織では悪性所見が得られたが組織型は決定できなかった.胸部写真でcoin lesionを認め,肺癌とその小腸転移を疑い左肺上葉舌区域切除を施行.病理組織診は肺癌(低分化型腺癌)で,小腸穿孔部の組織像と一致した.化学療法を施行したが約8か月半後に穿孔性腹膜炎で再度緊急開腹術を施行した.回腸に穿孔を認め切除した.組織診では癌細胞は認めなかった.その後左脛骨の骨転移部と縦隔に放射線照射と化学療法を追加した.肺癌小腸転移例の予後は悪く,術後6か月以内にほとんどの例が死亡している.本症例は2年10か月の延命が得られており,臨床経過,発症機序は興味深い.
索引用語
lung cancer, metastatic tumor of the small intestine, perforation of the metastatic lung cancer of the intestine
別刷請求先
小林 道也 〒783 南国市岡豊町小蓮 高知医科大学第1外科
受理年月日
1992年11月11日
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