原著
胃十二指腸液逆流によるラットの食道発癌実験
瀬川 正孝
金沢大学第2外科
胃十二指腸液の逆流が,食道および前胃に癌を発生させるかいなかを検索した.ウイスター系雄性ラットに,十二指腸液が吻合口より直接前胃に流入する経吻合口逆流手術(第1群),腺胃を経由して前胃に流入する経腺胃逆流手術(第2群),単開腹手術(第3群)を行った.ラットを発癌物質を投与せずに飼育し,手術後50週で,犠牲死させ剖検した.対照の第3群には病変は認められなかったが,第1群,第2群には扁平上皮癌がそれぞれ3/11(27%),3/18(17%)の頻度で,食道下部か前胃に発生した.そのほか,再生肥厚,過形成,IMCH(intramural cyst with hyperplasia),dysplasiaなどの組織学的変化が観察され,逆流による慢性食道炎を母地とした発癌様式が推測された.また,食道の円柱上皮化生と,前胃の粘液腺癌が観察された.以上の所見は,胃十二指腸液の逆流が食道発癌の重要な要因であることを示唆している.
索引用語
duodenal juice, gastric juice, reflux esophagitis, esophageal carcinogenesis, Barrett's esophagus
別刷請求先
瀬川 正孝 〒939 富山市今泉292 富山市民病院外科
受理年月日
1992年11月11日
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