胃軸捻転症および胃癌を併存した胃脂肪腫の1例

小野　寛人, 福島　淳一, 泉　武, 山本　勝美

泉胃腸科外科病院（現・高知医科大学第2外科^＊）

　胃脂肪腫は良性腫瘍の中でもまれな疾患であるが，今回われわれは，胃軸捻転症および胃癌を併存した胃脂肪腫の1例を経験したので報告する．
　症例は78歳の男性．嘔気と全身倦怠感を認め近医受診．上部消化管造影・内視鏡検査により，胃粘膜下腫瘍の診断にて当院紹介，入院となった．精査により，胃体中部大弯側の粘膜下腫瘍とともに体下部大弯側後壁寄りにBorrmann 3型胃癌を認め，同時に胃軸捻転症を併存していた．さらに，体中部の病変はCT値から脂肪組織に由来するものと考えられ，胃亜全摘術（Billroth II法），R₂を行った．病理組織学的にも漿膜下組織層の脂肪腫および漿膜下組織層に浸潤した低分化型腺癌と診断された．胃脂肪腫に胃癌を併存したものは本邦において18例の報告があるのみで，しかも胃軸捻転症を伴ったものは過去報告例がなく，きわめてまれな症例と思われた．

索引用語
lipoma of stomach, gastric cancer, gastric volvulus

別刷請求先
小野　寛人　〒783　南国市岡豊町小蓮　高知医科大学第2外科

受理年月日
1992年12月9日

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