症例報告
門脈本幹に腫瘍塞栓を形成した胃癌の切除例
白部 多可史, 中村 修三, 安井 信隆, 太田 正敏, 安村 和彦, 角本 陽一郎, 中川 自夫
日本鋼管病院外科
門脈本幹内に長径7.5 cmに及ぶ全周性の腫瘍塞栓を形成した胃癌の切除例を経験した.症例は38歳の男性で胃体下部から前庭部の大彎側を中心としたBorrmann 3型胃癌で,術中に上腸間膜静脈から門脈本幹におよぶ腫瘍塞栓を認め,門脈を8 cm切除するとともに膵頭十二指腸切除と横行結腸合併切除を施行した.本症例では肝転移はなく,1年1か月経過した現在も再発の徴候なく,社会復帰している.
胃癌が門脈内に腫瘍塞栓を形成することは極めてまれで,現在までにわずかに18例が報告されているのみである.しかも腫瘍塞栓を含めた切除が可能であったのは4例に過ぎない.これらの報告のほとんどが最近5年以内にされている.したがって,画像診断の進歩により今後同様の症例が増加すると考えられるので,進行胃癌の診断・治療にあたっては門脈腫瘍塞栓を念頭に置く必要があると考えられる.
索引用語
gastric cancer, portal vein tumor thrombus
日消外会誌 26: 1048-1052, 1993
別刷請求先
白部多可史 〒327 栃木県佐野市堀米町1555 佐野厚生総合病院外科
受理年月日
1992年11月11日
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