症例報告
先天性肥厚性幽門狭窄症に対する胃空腸吻合術後に発生した胃癌の1例
西土井 英昭, 石黒 稔, 工藤 浩史, 村上 敏, 正木 忠夫, 谷口 遙
鳥取赤十字病院外科
症例は29歳の女性で,心窩部痛を契機に胃癌が発見されたが,本症例は生後3か月時に先天性肥厚性幽門狭窄症に対して胃空腸吻合術が行われていた.肉眼的には胃体部のBorrmann 3型であり,胃切除術が行われたが,術後の組織検査でow(+)と判明したため残胃全摘術が追加された.胃癌取扱い規約に従って記載すると,組織学的には低分化型腺癌で,n(-),P0,H0,se,stage IIIであった.胃空腸吻合術後の胃癌の報告は,本邦では自験例を含めて34例認められるが,これらを集計したところ癌発生部位は吻合部に多いことが判明した. したがって,胃空腸吻合術後の胃癌の発生に胆汁を含む十二指腸液の胃内逆流が関与しているのではないかと推察された.
索引用語
gastric cancer after gastrojejunostomy, congenital hypertrophic pyloric stenosis, gastric carcinogenesis
日消外会誌 26: 1053-1056, 1993
別刷請求先
西土井英昭 〒680 鳥取市尚徳町117 鳥取赤十字病院外科
受理年月日
1992年11月11日
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