症例報告
開心術後に著明な肝転移をきたしたalpha fetoprotein産生胃癌の1例
島貫 公義, 宮田 道夫, 清崎 浩一, 佐竹 賢仰, 篠原 浩一, 鈴木 済, 甲斐 敏弘, 山田 茂樹*
自治医科大学附属大宮医療センター外科, 同 病理*
手術適応のある心疾患と消化器悪性腫瘍の合併症例に対する外科治療においては,開心術と悪性腫瘍根治術をどの時期に施行すべきかが問題となる.今回,大動脈弁狭窄・閉鎖不全症に対する大動脈弁置換術を先行させ,術後の著明な肝転移のために根治術の機会を逸したα-fetoprotein(αFP)産生胃癌症例を経験したので報告する.症例は76歳の男性で心不全・狭心症を認め,大動脈弁置換手術を目的として入院した.血中αFPが高値のために施行した画像診断にて進行胃癌を認めたが,肝転移と2群(胃癌取扱い則約)以上のリンパ節転移は確認されなかった.心不全症状のため開心術を先行させ,その28日後に開腹手術を施行したところ著明な肝転移を認め,胃切除術後45日目に肝転移巣の増大進行のため肝不全にて死亡した.胃癌の手術時期に関してはそれぞれの胃癌の進行度と予後を考慮し検討する必要があるものと思われる.
索引用語
alpha-fetoprotein producing gastric cancer, open heart surgery
日消外会誌 26: 1057-1061, 1993
別刷請求先
島貫 公義 〒330 大宮市天沼町1-847 自治医大大宮医療センター外科
受理年月日
1992年11月11日
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