症例報告
下大静脈に腫瘍栓を有する後区域肝細胞癌に体外循環下に下大静脈処理を先行させ切除した1例
野浪 敏明, 中尾 昭公, 横山 逸男, 原田 明生, 黒川 剛, 村上 裕哉, 鳥井 彰人, 平岡 英策, 高木 弘
名古屋大学医学部第2外科
Biopump体外循環下に下大静脈の処理を先行させて腫瘍栓の散逸を防ぎ,bypass解除後肝切除を行うことによって,vascular exclusion時間を短縮できた症例を経験した.症例は66歳の男性で検診の結果,AFPの異常を発見され,CT,腹部超音波,血管造影にて下大静脈に腫瘍栓を有する肝右葉後区域を中心とする肝細胞癌と診断して手術を施行した.腫瘍栓は右肝静脈から下大静脈の横隔膜部まで達しており,Biopump®による体外循環下vascular exclusionのもとに,下大静脈を切開して腫瘍栓摘除,右肝静脈の切離を行った.下大静脈切開部を閉鎖後,下大静脈と肝門部の遮断を解除した後,肝右葉切除を行った.遮断時間は27分と短時間であった.術後経過は良好であり第29病日に退院した.本症例に行った下大静脈処理を先行させた肝切除は,vascular exclusionの時間を短縮でき有用であると考えられた.
索引用語
hepatocellular carcinoma with tumor thrombus in the vena cava, hepatectomy, veno-venous bypass
日消外会誌 26: 1076-1080, 1993
別刷請求先
野浪 敏明 〒466 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学医学部第2外科
受理年月日
1992年12月9日
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