症例報告
内臓逆位症に併存した巨大脾腎静脈短絡路の1治験例
永井 裕司, 吉川 和彦, 東 雄三, 山田 靖哉, 有本 裕一, 石川 哲郎, 西野 裕二, 山下 隆史, 曽和 融生
大阪市立大学第1外科
症例は71歳の男性.以前より完全内臓逆位症を指摘されていた.6年前に某院で胃切除術を受け,このとき肝機能障害を指摘され,治療を受けていたが,高アンモニア血症が出現し,当院に入院した.血清アンモニア値は最高274 µg/dlを示した.脳波には異常を認めなかったが,傾眠傾向がみられた.腹部血管造影,経皮経肝門脈造影で最大径20 mmの巨大な脾腎短絡路が認められた.超音波誘導下肝生検では肝線維症の所見であった.非肝硬変性のsplenorenal shuntと診断し,短絡路閉鎖術を施行した.術中,右膵尾部近くに母指~示指頭大の副脾を3個認めた.術前後で門脈圧の上昇はほとんどなく,術後血中アンモニアは正常範囲内となり,傾眠傾向も消失した.内臓逆位症と門脈下大静脈短絡の合併例の報告はなく,興味ある症例と思われたので報告した.
索引用語
situs inversus, portocaval shunt, polysplenia
日消外会誌 26: 1095-1099, 1993
別刷請求先
永井 裕司 〒545 大阪市阿倍野区旭町1-5-7 大阪市立大学医学部第1外科
受理年月日
1992年11月11日
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