症例報告
外科的療法が奏効した胃癌術後肝十二指腸間膜部リンパ漏による難治性腹水の1例
太田 博文, 宮澤 とも子, 稲葉 秀, 上田 進久, 前浦 義市, 松永 征一, 冨田 和義
新千里病院外科
胃癌術後に肝十二指腸間膜部リンパ漏による難治性腹水を生じた症例を経験した.症例は70歳の男性,主訴は腹部膨満感.他院で早期胃癌のため幽門側胃切除およびリンパ節郭清を施行された後,多量の腹水貯留をきたしたため,当院へ紹介入院となった.入院時の腹部は高度に膨満していた.諸検査および画像診断により肝十二指腸間膜部リンパ漏による腹水と診断し,血液製剤や利尿剤投与および腹腔穿刺排液による保存的治療を試みたが効果が認められないため,手術を施行した.肝床部へ色素を注入することで肝十二指腸間膜部のリンパ管からの色素の漏出部を確認でき,リンパ液漏出部を結紮した.術後2年以上の現在も腹水の再貯留は認めていない.開腹術後の合併症で生じる肝リンパ液漏出は保存的に治癒する場合がほとんどであるが,保存的療法に抵抗する難治性腹水となった場合には全身状態の悪化を招く前に外科的療法を考慮すべきである.
索引用語
hepatic lymphorrhea after gastrectomy for gastric cancer, intractable ascites
日消外会誌 26: 1115-1119, 1993
別刷請求先
太田 博文 〒565 大阪府吹田市津雲台 1-1-D6 新千里病院外科
受理年月日
1992年12月9日
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