食道癌壁内リンパ流の臨床病理学的検討

島　一郎, 掛川　暉夫, 山名　秀明, 藤田　博正, 曺　光男, 入江　康司^＊, 森松　稔^＊

久留米大学第1外科, 同　第2病理^＊

　壁内転移（IM）またはリンパ管侵襲（lymphatic permeation，LP）を認めた31例を対象として，食道癌壁内リンパ流を検討した．IMは25例，49病巣存在し，壁内局在頻度は粘膜下層（sm）（51％），粘膜固有層（lpm）（27％），固有筋層（mp）（18％）で，smに最も多く認められた．smはリンパ管が豊富かつ複雑で，弁を有するリンパ管があることから，腫瘍細胞が捕捉されやすいものと考えられた．しかし，上部食道では解剖学的にリンパ管網の発達がないとされるmpにIMの1/3以上を認めたことより，上部食道では壁側へ向かう側方リンパ流の存在が推測された．LPは18例（IM 12例を含む），29病巣認められ，壁内局在はlpmに62％と最も多く，smは14％であった．LPは担癌生体におけるリンパ管内の癌細胞の流れを反映したものと考えられ，lpmのリンパ管網が長軸方向の重要なルートであることが示唆された．また，IM，LPの多くは主病巣より4 cm以内の部位に存在し，長軸方向の壁内リンパ流は4 cm前後と考えられた．

索引用語
esophageal cancer, intramural metastasis of esophageal carcinoma, lymphatic permeation of esophageal carcinoma, lymph node metastasis of esophageal carcinoma, lymphatic route of the esophageal wall

別刷請求先
島　一郎　〒830　久留米市旭町67　久留米大学医学部第1外科

受理年月日
1993年1月13日

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